こんにちは! ぴえこと申します
私はうつ患者なのですが、特に症状がひどい時は夜に一睡もできませんでした。
悲しい気持ちでぐちゃぐちゃになって、落ち込んで、体も冷えていて……。
一晩が永遠に感じてきます。
そんな夜のおともに、こちらのコミックエッセイをよく読んでいました。
眠れぬ夜はケーキを焼いて
↓続刊はこちら(既刊3巻、2024年12月11日現在)
Xでいくつかエピソードを公開されているので、気になる方はそちらから読んでみるのもオススメ。
冬の日にブラウニーを焼く話1/3 pic.twitter.com/QJ2kD1Wbu9
— 午後 (@_zengo) December 6, 2024
著者紹介
作者の午後さんは、作家・イラストレーターさんです。
自画像はオオカミで、これは幼少期に読んだ佐々木マキさんの『やっぱりおおかみ』(福音館書店)からの影響なんだそうです。
『眠れぬ夜はケーキを焼いて』がこんなにたくさんの方々に受け入れていただけるとは思っていませんでした…いつもとても感謝しています!!😭 pic.twitter.com/oyyQNM7KfA
— 午後 (@_zengo) August 16, 2024
本書、『眠れぬ夜はケーキを焼いて』は、午後さんの初書籍です。現在は、以下の連載を持っておられます。
- エッセ・オンライン「元・片付けられない漫画家の心地よい暮らし製作所」(リンクはこちら→連載一覧 | ESSEonline(エッセ オンライン))
- ビッグコミックスピリッツ、マンガワン「午後のおいしい薬膳日記」(リンクはこちら→午後のおいしい薬膳日記・第一話 養生の始まり 〜バナナでクールダウン編〜 | ビッコミ(ビッグコミックス)
概要
本作はレシピ付きのコミックエッセイです。
眠れない夜にお菓子をつくったり、軽食をつくったり、少しお出かけしたり……。
読んでいるとまるで、夜が味方になってくれるような気がしてきます。
孤独や不安を包み込んでくれる、優しい漫画です。
既刊3巻(2024年12月11日現在)
読んだきっかけ
私は「食事系のエッセイが読みたい」という動機から、この漫画を知りました。
小説、エッセイ、マンガなどなどジャンル問わず、ごはんやスイーツ系の書籍が、本当に大好きなんです……!
小学生の時は『わかったさん』シリーズや『こまったさん』シリーズ(ともにあかね書房)が大好きでした
実際に手に入れて読んでみると、午後さんのやさしい語り口にすっかり癒されてしまい、以降私の相棒のような漫画になりました。
お気に入りエピソード:レモンケーキ
私が特にお気に入りなのは、レモンケーキのお話です。
(決めきれないので、あえて1巻収録エピソードから選ばせていただきました)
これは午後さんがお店で一目ぼれしたレモンケーキの、再現レシピを紹介してくれるお話です。
何度も試行錯誤した末に、ついに到達したレシピを、惜しげもなく公開してくださいます。
「お店には及ばない」とおっしゃっていますが、とてもおいしそう……!
思わず作りたくなってきてしまいます。
しかし本書の魅力はそれだけではありません。
私が思う本書の魅力は、午後さんの「内面描写」です。
虚無感と付き合う
レモンケーキを焼きながら、午後さんは1人虚無感に襲われます。
「もっと他にやるべきことがあるはずでは?」
……否!
(中略)すべてが重要なイベントのわけがない
そんなのは疲れてしまう
(中略)無駄なんかじゃない
人生に必要な余白だ
どの時間がかけてしまっても
きっと今の私にはならなかったのだ
――KADOKAWA 午後『眠れぬ夜はケーキを焼いて』1巻 143、144ページより
そして、午後さんは焼きあがったケーキにアイシングをかけて頬張り、「無駄なことってひとつもないのかもしれない」と感じるのでした。
無駄なことってひとつもない
本書のレモンケーキのレシピは、
「湯煎しながら生地を混ぜる」
「オーブンで焼く」
「アイシングをつくってかける」など、いくつかの工程があります。
パウンドケーキなどの簡単なレシピに比べると少し煩雑ですが、この工程のどれが欠けても、求めるレモンケーキの味にはなりません。
「煩雑ではないだろ!」と思う方には、
私が普段お菓子作りをしない不器用人間ということで
お許しいただきたいです……。
また、このレシピにたどり着くまでも、午後さんは試行錯誤を繰り返し、そのたびに失敗作をたくさん作っていらっしゃいました。
しかしこの時に失敗したケーキも、おいしいレモンケーキにたどり着くためには必要なものだったのです。
たとえ何もできなくても
午後さんが「あの時間も無駄じゃなかった」と回想するシーンでは、寝込んでいる午後さんの描写が入っています。
それが今、本書を読んでいる自分と重なっていきます。
たとえ、今読んでいるこの時間は、眠れない夜に絶望していても。
何もできなくて、天井を見つめているだけの時間でも。
いつかこのレモンケーキのように、おいしくなる。
絶対に無駄じゃない。
このエピソードを読むと、自然とそう思えてくるのです。
この境地に至るまで、午後さんはいったいどんな経験を積まれてきたのでしょうか……
ちなみに3巻収録の「冬の夜にテリーヌショコラを焼く話」も、眠れない辛い夜を受け入れるお話となっているのでオススメです。
眠れぬ夜はケーキを焼いて3 [ 午後 ]
ぴえこ的感想
読んでいるとまるで、辛い夜を午後さんと一緒に過ごしているような感覚になります。
静かで優しい語り口や、シンプルながら美しい絵のおかげでしょうか。
小さな「できた」を重ねる
本書を読むと、自分の今日の一日も、なんとなく救われたような気持ちになります。
「お菓子ができた」「夜食がつくれた」など、たくさんの「できた」を積み重ねていく午後さんの時間を、追体験できるからかもしれません。
といっても、本書には「こうした方がいい」「これをして」といった言葉はありません。
たとえるなら、同じ部屋にいるけどお互い違うことをしているときの、心地よさのような。
ただ黙ってそばにいてくれるような、やさしい本だなと思います。
辛い時でも、穏やかで小さな幸せを大切にしたくなります。
こんな人におすすめ
夜寝られなくてつらい人、静かに寄り添ってほしい人におすすめ。
「ひとりじゃない」という気持ちになれます。
また、お菓子作りが好きな方にはもちろんおすすめですが、普段まったくしない方にもめちゃくちゃおすすめしたいです。
「どのタイミングで片付けるか」「いつオーブンをあたためるか」、みたいな細かいところまで漫画にしてくださっているからです。
全部生地を用意し終わってから「え待って、オーブン余熱してないわ!」
ってなっちゃう、私みたいな人にはおすすめです
余談ですが
食事系の小説、エッセイ、コミックなどを読んでいるときの、あの充足感ってなんなんでしょうね。
このジャンルでないと満たされない心の部位がある気がします。
個人的には、内臓としての胃袋以外に「読書の胃袋」があると思ってます。
精神的な満腹感、みたいな。
まとめ
『眠れぬ夜はケーキを焼いて』は、静かでやさしいコミックエッセイです。
たくさんのおいしそうなレシピが出てきます。
辛い夜のおともに、こちらの本を読んでみるのはいかがでしょうか。
↓続刊はこちら(既刊3巻、2024年12月11日現在)
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