『眠れぬ夜はケーキを焼いて』悲しい夜に寄り添う、ケーキの香りと暖かさ

☆とにかくつらいとき
UnsplashMilada Vigerovaが撮影した写真
ぴえこ
ぴえこ

こんにちは! ぴえこと申します

私はうつ患者なのですが、特に症状がひどい時は夜に一睡もできませんでした。

悲しい気持ちでぐちゃぐちゃになって、落ち込んで、体も冷えていて……。

一晩が永遠に感じてきます。

そんな夜のおともに、こちらのコミックエッセイをよく読んでいました。

眠れぬ夜はケーキを焼いて

↓続刊はこちら(既刊3巻、2024年12月11日現在)

消費HPレベル
おすすめ度
こんな人におすすめ
  • 悲しい、気分が落ち込んでいて辛い
  • お菓子づくりが好き
  • しんどい時は励まされるよりも、寄り添ってくれる方が好き

Xでいくつかエピソードを公開されているので、気になる方はそちらから読んでみるのもオススメ。

著者紹介

作者の午後さんは、作家・イラストレーターさんです。

自画像はオオカミで、これは幼少期に読んだ佐々木マキさんの『やっぱりおおかみ』(福音館書店)からの影響なんだそうです。

本書、『眠れぬ夜はケーキを焼いて』は、午後さんの初書籍です。現在は、以下の連載を持っておられます。

概要

本作はレシピ付きのコミックエッセイです。

眠れない夜にお菓子をつくったり、軽食をつくったり、少しお出かけしたり……。

読んでいるとまるで、夜が味方になってくれるような気がしてきます。

孤独や不安を包み込んでくれる、優しい漫画です。

既刊3巻(2024年12月11日現在)

UnsplashJoanna Kosinskaが撮影した写真

読んだきっかけ

私は「食事系のエッセイが読みたい」という動機から、この漫画を知りました。

小説、エッセイ、マンガなどなどジャンル問わず、ごはんやスイーツ系の書籍が、本当に大好きなんです……!

ぴえこ
ぴえこ

小学生の時は『わかったさん』シリーズや『こまったさん』シリーズ(ともにあかね書房)が大好きでした

実際に手に入れて読んでみると、午後さんのやさしい語り口にすっかり癒されてしまい、以降私の相棒のような漫画になりました。

お気に入りエピソード:レモンケーキ

私が特にお気に入りなのは、レモンケーキのお話です。

(決めきれないので、あえて1巻収録エピソードから選ばせていただきました)

これは午後さんがお店で一目ぼれしたレモンケーキの、再現レシピを紹介してくれるお話です。

何度も試行錯誤した末に、ついに到達したレシピを、惜しげもなく公開してくださいます。

「お店には及ばない」とおっしゃっていますが、とてもおいしそう……!

思わず作りたくなってきてしまいます。

UnsplashHoney Fangsが撮影した写真

しかし本書の魅力はそれだけではありません。

私が思う本書の魅力は、午後さんの「内面描写」です。

虚無感と付き合う

レモンケーキを焼きながら、午後さんは1人虚無感に襲われます。

「もっと他にやるべきことがあるはずでは?」

……否!

(中略)すべてが重要なイベントのわけがない

そんなのは疲れてしまう

(中略)無駄なんかじゃない

人生に必要な余白だ

どの時間がかけてしまっても

きっと今の私にはならなかったのだ

――KADOKAWA 午後『眠れぬ夜はケーキを焼いて』1巻 143、144ページより

そして、午後さんは焼きあがったケーキにアイシングをかけて頬張り、「無駄なことってひとつもないのかもしれない」と感じるのでした。

無駄なことってひとつもない

本書のレモンケーキのレシピは、

「湯煎しながら生地を混ぜる」

「オーブンで焼く」

「アイシングをつくってかける」など、いくつかの工程があります。

パウンドケーキなどの簡単なレシピに比べると少し煩雑ですが、この工程のどれが欠けても、求めるレモンケーキの味にはなりません。

ぴえこ
ぴえこ

「煩雑ではないだろ!」と思う方には、

私が普段お菓子作りをしない不器用人間ということで

お許しいただきたいです……。

また、このレシピにたどり着くまでも、午後さんは試行錯誤を繰り返し、そのたびに失敗作をたくさん作っていらっしゃいました。

しかしこの時に失敗したケーキも、おいしいレモンケーキにたどり着くためには必要なものだったのです。

Unsplashbruce marsが撮影した写真

たとえ何もできなくても

午後さんが「あの時間も無駄じゃなかった」と回想するシーンでは、寝込んでいる午後さんの描写が入っています。

それが今、本書を読んでいる自分と重なっていきます。

たとえ、今読んでいるこの時間は、眠れない夜に絶望していても。

何もできなくて、天井を見つめているだけの時間でも。

いつかこのレモンケーキのように、おいしくなる。

絶対に無駄じゃない。

このエピソードを読むと、自然とそう思えてくるのです。

ぴえこ
ぴえこ

この境地に至るまで、午後さんはいったいどんな経験を積まれてきたのでしょうか……

ちなみに3巻収録の「冬の夜にテリーヌショコラを焼く話」も、眠れない辛い夜を受け入れるお話となっているのでオススメです。


眠れぬ夜はケーキを焼いて3 [ 午後 ]

ぴえこ的感想

読んでいるとまるで、辛い夜を午後さんと一緒に過ごしているような感覚になります。

静かで優しい語り口や、シンプルながら美しい絵のおかげでしょうか。

小さな「できた」を重ねる

本書を読むと、自分の今日の一日も、なんとなく救われたような気持ちになります。

「お菓子ができた」「夜食がつくれた」など、たくさんの「できた」を積み重ねていく午後さんの時間を、追体験できるからかもしれません。

といっても、本書には「こうした方がいい」「これをして」といった言葉はありません。

たとえるなら、同じ部屋にいるけどお互い違うことをしているときの、心地よさのような。

ただ黙ってそばにいてくれるような、やさしい本だなと思います。

辛い時でも、穏やかで小さな幸せを大切にしたくなります。

UnsplashAlec Favaleが撮影した写真

こんな人におすすめ

夜寝られなくてつらい人、静かに寄り添ってほしい人におすすめ。

「ひとりじゃない」という気持ちになれます。

また、お菓子作りが好きな方にはもちろんおすすめですが、普段まったくしない方にもめちゃくちゃおすすめしたいです。

「どのタイミングで片付けるか」「いつオーブンをあたためるか」、みたいな細かいところまで漫画にしてくださっているからです。

ぴえこ
ぴえこ

全部生地を用意し終わってから「え待って、オーブン余熱してないわ!」

ってなっちゃう、私みたいな人にはおすすめです

余談ですが

食事系の小説、エッセイ、コミックなどを読んでいるときの、あの充足感ってなんなんでしょうね。

このジャンルでないと満たされない心の部位がある気がします。

個人的には、内臓としての胃袋以外に「読書の胃袋」があると思ってます。

精神的な満腹感、みたいな。

まとめ

『眠れぬ夜はケーキを焼いて』は、静かでやさしいコミックエッセイです。

たくさんのおいしそうなレシピが出てきます。

辛い夜のおともに、こちらの本を読んでみるのはいかがでしょうか。

↓続刊はこちら(既刊3巻、2024年12月11日現在)

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